イチローは老人の宝

「イチローは老人の宝だ」・・・この言葉を思いついたのは、2001年に遡る。

それはイチローが海を渡ってシアトル・マリナーズに入団した年。マリナーズのユニフォームを着た入団会見で、うれしそうにくるっと回ってみせた姿が忘れられない。そして日米の関係者の大方の予想を裏切って、あの活躍をした。開幕でいきなり2本のヒットを打ち、その年最高得票でオールスターに選ばれ、新人王、首位打者、盗塁王、そしてMVPになった。

さて、開設2年目になっていた蓼科山荘は、すでに「定番来訪者」がいくつか出来ていたが、その一つがW大の広告研究会OBの面々。彼らは日本の高度成長を走りぬき、定年を迎えていた。ご他聞にもれずゴルフ以外はさしたる趣味も無い面々。朝早く起きて、ちょっとした庭いじりをしたあとの膨大な無聊の時間。そこをイチローが完全に埋めてくれたのである。

それまで大リーグは、パイオニア野茂の活躍が話題だったが、いかんせん投手。毎試合は出ない。しかも興味は彼が投げている場面のみ。毎日の楽しみにはならない。そこにイチロー。ほぼ毎日、打撃も走塁も守備もフルタイムで楽しめる。これに老人達が熱狂した。ちなみにあの”レーザービーム”は、開幕間もない4月13日の出来事。

おじさん達(W大OB)8人が蓼科山荘に来たのは2001年8月だったが、そのうちの7人は、その時すでに「にわかマリナーズフアン」になっていて、最近の試合やら、各選手の寸評やら、はては監督(ルー・ピネラ)の采配まで、話し始めるととまらない有様。あきれ返る残りの一人・・・といった状況だった。話す口振りに強い興奮が混じっている。これを深読みすれば、この世代は戦後まもなく小学校に入った世代で、人生ずっとアメリカの国力にわずかなコンプレックス(と憧れ)を持っていた世代ゆえに、「イチローが日本人を代表してアメリカをうならせている」という感覚が付加されているようだった。

働きずめで生きてきて定年を迎えた彼らに(小生のことはさておく)『毎日の希望』を作り出しているイチローは、まさに”老人の宝”だなー。そういう感慨だった。

時は流れて2009年。WBCでまた「神が降りた」。そして老人ばかりでなく、若者が選ぶ「理想の上司」で1位、「好きなスポーツ選手」ではあらゆる世代で2位に圧倒的な差をつけて1位なのだそうな。

それでもなんでも一度イチローに向けて書いておきたかった。2001年からの様々な結果と振る舞いをすべて含めて『イチローは老人の宝である』と。

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9年連続200安打への今シーズン。イチローが老人の宝である時は続く。プレイスタイルに何かの評がつくのはお構いなし。自分の道を行けば良い。(並なら雑音も無いわけだけれども・・・。)

またシアトルに行きたい。イチローを観に。

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